ディケイド考察小説(完結)
「あと…十人か」 アギトとファイズとの激闘を終え、すぐに次の戦いへと赴いた士を出迎えたのは一人の異形の戦士だった。 全身を覆うのはバッタを連想する強固な外骨格、そして額に浮かぶ宝石のような瞳。前腕や指先、そして足には鋭い爪が伸びる。 彼はその…
煌々と火を点し続ける燭台が不気味に照らす神殿内部。その宝物庫の中に、夏海はいた。 「何これ…」 タツノオトシゴのような形の、細長いものをつまみ上げてしばらく観察した後、それを放り投げる。 ほとんどゴミ捨てば場じゃないですか、というと―― 「やっ…
「…はあ、はあ…」 自爆したファイズのカードが宙に舞い、ライドブッカーに収まる。 「がはっ…!」 船の瓦礫も大半が消し飛び、運良く残っていたベンチの座面にしがみつく。 もっともフォトンブラッドの奔流に飲み込まれて助かった自分自身も運が良かったと…
次の戦場は、船上だった。 「こういうくだらない趣向は勘弁願いたいがな…」 「ああ、俺もだ」 甲盤の手すりに寄り掛かって気だるげにしているのは、仮面ライダーファイズ。 ディケイドライバーにインプットされているデータでは特別、水中、水上戦が得意な…
「…なんだ、ここは?」 壁に残る壮絶な破壊跡に手を触れながら呟く。 これまでは次元移動の先を常に屋外へと誘導されていたが、今回は薄暗い建物の中だった。ひんやりとしているその温度以上にどこか人気の失せた雰囲気がする。 通路は人がすれ違うのにやっ…
「ここは、もとの世界か…?」 次元の扉をくぐり抜けた先は、見覚えのある風景だった。 隠れる場所も無い、無人の石切場。 「ライダーがいないはずは無いんだが」 一瞬よぎったのは、ユウスケと夏美の顔だった。 あの二人は大丈夫だろうか… 「やあ、ディケイ…
~もう残った時間は少ない。やはり、ここが限界か~ 『アタックライドゥ』 『ブラスト!』 一発一発が並の怪人であれば戦闘不能に追い込める程の威力を持つ、無数の誘導弾をばら撒くが。 いとも簡単にそれらをかき消されて舌打ちする。 ディエンドは何時も…
「…次元干渉を確認、各自戦闘準備に入ってくれ」 ライオトルーパーの出迎えも無く、ディケイドは辺りを見渡す。 「ここは…誰の世界だろうな」 湿った土と落ち葉を踏みながら、周囲の鬱蒼と繁った木々の間を進む。 「ご丁寧にこっちの移動を制限してるようだ…
「…来ましたか」 「なんだ、お前一人か」 渡った先の世界ではすでに夜の帳が下りていた。声に見上げると崖の上で真紅の月の輝きを背に、仮面ライダーキバ、エンペラーフォームが佇んでいる。 「ええ。僕にも、貴方にも個人的な思いがあるでしょう」 「さあな…
「だー…」 「あっちか?」 「いや、こっちか!」 「うおおおお!ディケイドの野郎、どこ行きやがった!」 穏やかなさざなみをモモタロスの絶叫が喧しくかき消し、マスクの下で神啓介は苦笑いした。粒子の細かな砂を蹴りながら、仮面ライダー電王と仮面ライダ…
「全ての世界を破壊する」 破壊者と、悪魔と呼ばれ、しかし旅を続けて来た士の目には確かに見えていた。 壊してはいけないもの。 守りたいもの。 心の赴くままに戦って来た… これがその「ツケ」なのか? 「あなたは壊さなければならないこれまでの世界を破壊…