仮面ライダーディケイド考察小説 第九幕 「Limitless LEVEL」 その2
『ファイナルアタックライドゥ カカカカブト!』
蹴り上げられたストロンガーの体を中心に、ゼクターカブトが旋回し狙いを定める。
「ぐうっ…!」
姿勢を制御しようと試みるが、すでにゼクターカブトはストロンガーの背中へと狙いを定めていた。
「ぐおっ!」
クロックアップの速度でゼクターカブトが隕石の如くストロンガーへと衝突する。
そしてその到達点には――ディケイド。
「はあっ!」
待ち構えていたディケイドの蹴りが、ストロンガーに叩きこまれる。
「とことん…虫唾が走るヤロウだぜ…!」
断末魔は――爆発音にかき消された。
ゼクターカブトが役目を終えて消滅し、クロックオーバーしたディケイドがシンに向き直る。
僅かな間ではあったが、何とか立ち上がれるほどには落ち着いたようだった。
「ディケイド」
シンが呟いた。
その目に涙をたたえて。
「君は…どうして戦えるんだ」
「なんだと?」
「君から伝わってくるのは悲しみだ。一つじゃない…何重もの悲しみが君を包み込んでいて、痛みに叫んでいるじゃないか」
「…」
ディケイドは身構えた。
ディケイドは身構えた。
その言葉に答えるにはあまりにも、シンが放つ力が強大過ぎたのだ。
「そんな嵐の中でどうして君は前に進もうとしているのか…俺には分からないが」
念動力。
仮面ライダーシンは、テレパシーを中心とした人の感情、外部のエネルギーを取り込むことでそのスペックが上昇するという能力があった。
ディケイド、そして変身者の士はそんな超能力など持ち合わせないためそれにより心をすべて読まれることは無かったが、何かを感じ取られたのだろう。そしてディケイド自身のエネルギー、ストロンガーのチャージアップが彼の力を極限まで引き上げていた。
それがディケイドのスーツを通り抜けて士自信を押しつぶそうとしている。
先ほどの肘や胸の痛みも、強化装甲を介さずに直接叩き込まれたこの力の片鱗だったのだろう。
「戦う事しかないのならば――戦おう、全てを、賭けて!」
『ファイナルアタックライド アアアアギト!』
「はああああ…」
召喚したのは仮面ライダーアギト・フレイムフォームが使用する「フレイムセイバー」。
名の通り炎の力を宿したその剣を構え、力を開放する。
「おおおおおっ!」
「あああああっ!」
シンがハイバイブネイルに念動力を籠め、通り抜けたものすべてを破壊する防御不可能のサイキックネイルへと変える。
フレイムセイバーとサイキックネイルが、業火と共に交差した。
『…士、死ぬなよ』
袈裟切りにされた傷口から炎が噴き出て、二つに別れた体が再生することなくそのままシンはライダーカードへと姿を変えた。
胸の痛みに耐えながら、しばらくディケイドはそこに膝をついたまま。
「空耳…か」
そんなことを口にして、カードを回収したのだった。
残るは、九人。