仮面ライダーディケイド考察小説 第十三幕
遂にディケイドは出会ったライダーたちを全て破壊するに至った。
しかし彼らの力もまた凄まじく、新たに得たドライバー、そして『激情体』の力も失われかけている。
疲れ果てて倒れた彼が目を覚ました時、最後のライダーがそこにいる。
彼にとっては、最初の仮面ライダーが。
「う…?俺は…」
龍騎を撃破したものの、これまでに蓄積したダメージはディケイドライバーの自動修復能力を超え、士本人の体力を大きく消耗させていた。
目覚めは気持ちのいいものではない。
「起きたかい?」
「―――!」
突然かけられた声に首を向けると、そこには仮面ライダーが胡坐をかいて座っていた。
「大丈夫?手、貸そうか」
だがその言葉より速く、向かってくる手に反応しディケイドは飛び起きた。
仮面ライダーは驚いたようだったが、すぐに自分も立ち上がって彼と相対する。
「君が門矢士…ディケイドで、間違いないかな?」
「お、まえ…は?」
「お、まえ…は?」
そこに居たのは、見たことも無いライダーだった。
いや、確かに彼が最も知っていて、ずっと一緒に旅をしてきた者の姿に良く似ていたが…見たことのない『変化』に士は戸惑いを隠せない。
いや、確かに彼が最も知っていて、ずっと一緒に旅をしてきた者の姿に良く似ていたが…見たことのない『変化』に士は戸惑いを隠せない。
ディケイドライバーに内蔵されたデータをスクリーンに展開しようとするが、壊れかけのドライバーは「ERROW」の文字でその機能は使用不能だと訴える。
だが今目の前に「士の知らないクウガ」がいるということは、ユウスケも、もう。
白いクウガ。
黒いクウガ――全スペックにおいてライダー最強を誇るアルティメットクウガとは真逆のその姿に、どんな力を秘めているのか。
ライドブッカーガンモード、ソードモードの起動も出来なくなっていた。
自分の体すら言う事を聞かない。
それでも、
「俺はお前を破壊する…!」
「やっぱり、戦う…しかないか」
五代と名乗ったクウガは自分の手のひらを見つめて――ぽつりと呟いた。
ディケイドが動かないのを見て、白いクウガは拳を硬め殴りかかってくる。
「うおおっ!」
士は叫びをあげ満身創痍の体に鞭打つが、走る痛みに筋肉が伸び切らずに動きにならない。そしてその拳がディケイドの胸を打った。
がつっ――
「…?」
「はっ、だっ!」
続けて二、三発。
あまりのダメージの…無さ。押されてふらついたくらいで痛くもかゆくもない。
白いクウガの『動き』自体は見事なもので、どのライダーと比べても見劣りしない、むしろ優れているほどのものだったが力は致命的に『強化』を感じないものだった。
流石にうっとおしくなって振り払った手がクウガに直撃すると、
もんどりうって転がった。
「…大丈夫か?」
思わず心配して、尋ねる。
「…大丈夫か?」
思わず心配して、尋ねる。
「白色じゃ…いや、やっぱりあの色じゃないと、戦いにもならないか」
声色は悪くなかったが、すでに体は痛みにふらついていた。
「この色は蛹でね…クウガの力はほとんど発揮されないんだ」
「手加減の…つもりか!」
「これが全力さ」
「俺のベルトは一度壊れていてね…ようやく、この姿になれるほど回復したところなんだ」
嘘は微塵も感じない。だからこその疑問を投げかける。
「そんな状態で何故ここに来た?誰に言われたにしろ…戦いになるのは分かってるだろ」
「簡単に聞いただけだけど、なんとなくわかるよ。俺ともう一人のクウガ…小野寺君が会うことは、小野寺君にとって良くない事なんだろう?」
「…!」
士に戦慄が走る。
「お前、ユウスケと…会ったのか!アイツは消えなかったのか!?」
「会ったよ。今も元気だから安心して」
九人のライダー達は確かに別世界の別人だが、世界が重なってしまった今の状態では『同じ存在』である『同じライダー』であるため、多重存在を否定されて消えてしまう。だが…
「彼は俺と会ったときにベルトが壊れてて変身できなかったから大丈夫だったのかも知れないな…」
根拠はないが、五代はそう考えていた。
「でも、治ったらきっと君を助けにやってくる。彼も、クウガだから」
人を疑いもせず信じているその姿勢に、小野寺ユウスケという男が重なった。
「たあーっ!」
一足で飛び上がり、ディケイドへと蹴りを放つ!
「うおおおおっ!」
ディケイドはもはや失われた力を右拳に集め、そのエネルギーが鈍くマゼンタに輝く。