不肖不精な置小屋 seasom2

仮面ライダーのS.H.Fの写真を中心に、まったりやってます

仮面ライダーディケイド考察小説 第十六幕 「Wake Up the Dark」

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『AttackRide Cross Attack!』

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「ムンッ!」

 バーニングショットとカイザスラッシュを、刃の一振りで空間ごと切り裂く。
 
「凌いだ!俺の攻撃を!」
 仮面ライダーギャレンが声を上げる。

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「一々うっとおしいぞ、疑似存在如きが!」

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 そう言うとビルゲニアはディエンド達に剣の切っ先を向け、首をもたげた蛇のような構えを取る。

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 その構えのまま不気味に体が揺らめいたかと思うと、まるで分身したかのように姿を眩ませた。
「くっ…!」
 ディエンドも銃弾を撃ちこむが、すべて幻影に惑わされてダメージを与えられない。

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「吹き飛ぶがいい!」
 幻影が収束し、同時に地獄の業火がビルセイバーから召喚されディエンドめがけて放たれる。

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「ぐあっ!」
 ディエンドの頭上で大きく渦巻いた炎はギャレンとカイザを巻き込んで、周囲の空間を爆砕する。

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「これで煩い蝿共は追い払えたか」

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「剣をしまうとは余裕だね…誰が追い払われたって?」
「フン…いくらこの俺とは言えもはや貴様を過小評価はせん」
「それは光栄だね」

 肩を竦めるディエンドだったが、ビルゲニアの雰囲気の変化に気を引き締める。

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「見せてやろう…この俺の真の力を!」

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 ビルゲニアの両手に、煌めくエネルギーの塊が浮かぶ。

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「それは…キングストーン!」
 キングストーン。
『暗黒結社ゴルゴム』に伝わる超物質であり、彼らの王である『創世王』の力の源たるそれは『太陽の石』と『月の石』に分かれている。
 ゴルゴムでは五万年に一度その二つの石を別々の資格者…『世紀王』に託し戦わせ、相手の石を勝ち得た方に『創世王』を継がせてきた。

 だがかつての月の石の所有者であったシャドームーンが石と共に滅んだため、二つのキングストーンは二度と揃わず、新たな創世王も現れることはなくなった。

「何故キングストーンが二つ…!」

 動揺を隠せないディエンドが思わず漏らした言葉にビルゲニアは笑う。


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「残念ながらどちらも『太陽の石』だがな…一つは憎きBlackのもの、そしてもう一つは数年後に変質したRXのものだ。」

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「かつて俺は二人の世紀王に敗北した」

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「この体が、魂が燃え尽きそうになった瞬間…俺は全てを憎んだ。生まれた時代の違いだけで世紀王に選ばれなかった事、創世王が俺とシャドームーンを天秤にかけて淡い期待を持たせた事、そしてサタンサーベルも俺を見放した事…。

 このまま死んでたまるか、そう思った瞬間に俺はゴルゴムでも禁忌とされていた、次元転移の術を使った…下手に使えば全宇宙が滅びると言われていたがどのみち死ぬのなら、全てを巻き添えにしてでもと思った」

「上手くいったときには驚いたよ…そこはゴルゴムこそあったがすでに滅びかけていて、あの二人の世紀王もいなかった…俺は数千年の眠りについた。復讐を胸に」

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「目覚めた俺は様々な次元を渡り、時を越え、二つのキングストーンを揃える術を探した。だが…『特異点』でもあるキングストーンは唯一無二のもの。自分が元居た次元の過去でさえ、もはや月の石は消滅したままだった。」

「ならばキングストーンを超える力を手に入れて、すべての次元を手中に収めよう…そのために、超エネルギーのカギである『クラインの壺』を手に入れようとした時…今度はお前たちだ、ディケイド、そしてディエンド!」

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「貴様らがしつこく俺を追っているのは分かっていたからな…ならばそれすらも利用して、この状況を作り出したわけだ」

「あとはライダーカードを破壊した時に生じる世界の自己修正力…それをすべて奪いクラインの壺を完成させることで、俺は神に等しくなる」

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「二つのキングストーンの力…求める神には及ばないがこの力は本来俺が手に入れるはずだった力だ!」
 両手のキングストーンを合わせ、弾ける力が少しずつビルゲニアへと収斂する。

 
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「凄いパワーだ…!」
 巻き起こる暴風に先手を打つことも出来ず、ただ変化を見守らざるを得ない。

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「ふふふ…!」

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 こらえきれない笑みと邪悪な力が溢れ出て、強固な甲冑は怪人の異形が露わになる。

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 顔は漆黒の面に覆われ、迫り出した胸部には二つの太陽が宿る。
 だがその太陽は闇の帳によって禍々しく歪んでいた。

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「最早…塵一つ残らんと思え」
「…!」
 ディエンドの動揺はその凄まじい力へのものではなく、新たな『お宝』が出現したことに対する喜びに近かった。
 しかし変質させられたそれから感じるものは――

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「行くぞ!」
 大地を一蹴りし、質量を増したビルゲニアの体が冗談のような速度でディエンドへと突進する。

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(速いが――捉えた!)
 ディエンドもコンプリートフォームの力を全開、クロックアップ位相へと身を置くとさらに速度を上げる。



 しかし。



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 形容しがたい…まるで重さが音を立てたと言わんばかりの身の毛がよだつ音の直後、背後に回ろうとしたディエンドの正面からビルゲニアの手が顔面を鷲掴み、

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 地面へと叩き伏せた!
「ぐはっ…!!!」
 コンプリートフォームの装甲をも貫く衝撃が海東自身の肺を絞り上げる。

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 更に左手から放たれた火炎が直撃すると、周囲の地面をも融解させ地獄の窯のような光景へと変えてしまう。

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「はあっ…はあっ…!かはっ!」
 紙一重で炎を回避したディエンドだったが、立ち上がれずに地に伏す。
「先ほどまでの威勢は見る影もないな」

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「ぐっ…」
「止めだ!」
 ようやく体を起こしたディエンドに、ビルゲニアが足を向けた。

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「!」
 だがビルゲニアの眼前からディエンドが消えた。
「これは…イリュージョンか!」

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「その通り!貰ったよ!」
 死に体だったのはアタックライド・イリュージョンによって造られた分身体。
 インビジブルを併用し、本体はすでにビルゲニアの背後・至近距離に詰めている!

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『FinalAttackRide DI DI DI DIEND!』

 渾身の一撃が、ビルゲニアへと放たれる。

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 ビルゲニアを飲み込み爆発し、尚も進む蒼い奔流は地平線までを一直線に削り取った。
 上がる土煙のなか、ディエンドは痛む胸を押さえながらも呟く。
「やったか…!」

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 だが土煙が風に流れ、平然とビルゲニアは変わらぬ位置に居た。
「ファイナルアタックライドで傷一つもないなんて…!」
「当たれば危なかったろうが、残念だったな」

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「俺の名は『剣聖』ビルゲニア!とはいえこの姿で剣を抜かされるとは思わなかったぞ…ふふふふふ…!」

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「あれを切り裂いて防ぐなんて…万事休す、か。だが…!」
 戦慄する海東だったが、ディエンドライバーを両手で構える。
 その冷たく重い銃を初めて手に取った時のことは、今でも憶えていた。その時の想いもまた。

(僕の狙いはブレない…せいぜい気持ちよく戦って、時間を忘れるといい!)