仮面ライダーディケイド考察小説 第二十三幕 「目の前を隠す 全てを蹴散らせ」
「はあっ!」
ビルゲニアへと走る四人へと次々に迫りくる怪人達。
しかしディケイドとすれ違った怪人は次々とライドブッカーソードに切り捨てられ、爆裂四散する。
「背中が硬いのね、なら!」
トータスロードの背中にある甲羅での防御を見抜くとキバーラは跳躍し、軽やかに頭上を越えると
そのまま剣を振り抜く!
斬撃と共に叩き込んだ魔皇力が紅蓮の焔となってトータスロードを葬ると、キバーラもまた止まらずに先を目指す。
「どけぇっ!」
一方、クウガの眼前に立ちふさがるスネークロードだったが、
駆け抜ける勢いをそのまま乗せた拳を受けると、
「ウボァアアアア!」
勢いよく吹き飛び、
そのまま上空で壮絶な爆発を遂げた。
「なんっ…だ、この力は!」
思わず自分の拳を覗きこむユウスケ。
だが驚いてばかりもいられない、と気を取り直すと遅れないように先を急ぐ。
「三下風情が、僕らの邪魔をするのかい?」
ダメージによりやや遅れを取ってしまったディエンドだが、ディエンドライバーをまだ遠い敵の軍勢へと向ける。
<FINAL ATTACK RIDE DI DI DI DIEND!>
「道を開けたまえ!」
「…!」
幹部クラスの怪人をもあっさりと飲み込む蒼い奔流が、その示す先を無人の凱旋道へと変える。
そこを駆け抜けて一気に先頭のディケイドまで追いつくが、そこでは彼がある怪人の前で立ち止まっていた。
「邪魔をするな!」
ディケイドがライドカードを取り出すのを見て、ディエンドが叫ぶ。
「駄目だ士!そいつにカードを見せるな!」
「何っ…!?」
だが時すでに遅し、その怪人の首元から伸びている蛇がきらめいたかと思うと強力な引力が発生する。
「カードが、吸われる…!?」
必死に抵抗するディケイドだが、耐え切れず指からカードがすり抜けた。
「させない!」
カードがその怪人に吸収されようとするが間一髪、横からクウガが回し蹴りを放つ!
吸引が止まり、ひらりと舞ったカードはそのままディケイドの手元に戻った。
「そいつは…ケルベロスアンデッドは僕らのライドカードを吸収できる!こいつを倒すにはカード無しで戦わなければならない…」
「なるほどね、じゃあ俺の出番だな!」
ディエンドの言葉に、クウガが応えた。
「ユウスケ!」
士が加勢に入ろうとするが――
「大丈夫!」
「…!」
ユウスケは親指を天に向けて胸を張る。
「…だからお前は先に行くんだ、士!」
「…わかった!」
ユウスケの決意が何なのか、それを汲むには時間が足りなかった。だがその決意が重要なものなのだと感じるのに、時間は要らない。
この場を任せ士と海東はうろたえるケルベロスⅡの横をすり抜け先を急ぐ。
「そう言えば…!海東、これを!」
思い出したように取り出し、投げつけられた「それ」を受け取る海東。
「これは…!?」
それはもう一つのディエンドライバー。
「お前の予備だろ!貸してくれてありがとうな!おかげでここに来れた!」
「…」
ディエンドライバーに予備などない。つまりこれは…
何の役に立つのかもわからないが、もうひとつのディエンドライバーをしまうと海東は再び走り出した。
「さあ、お前の相手は俺だ!」
「グウウ…!ライダーシステム…カード…不死…!」
「行っくぞぉぉぉ!」
掛け声とともに弾けるエネルギーが大地を打ち鳴らした。
「きゃあっ!」
「夏みかん!」
上空から叩き落されたキバーラを、ディケイドが受け止める。
「何だあのデカブツは!」
「分かりません、空から攻めていたら急に現れて…」
体の各部に埋め込まれた宝玉、アンバランスな人型を先端に持つ奇怪な怪人。これまでのどの世界の怪人にも共通しない特徴。
「面白いじゃないか、それに…これはお宝の匂いだ」
「海東!」
そうおどけながらディエンドが前に出る。
「ここは僕に任せてもらおう、君たちに任せてお宝まで吹き飛んではたまらない」
再びケータッチを取り出す。
「凄い力…!でも、一人で戦える相手じゃ…」
「戦える。僕のこれはそのための力だ。そして君の力が最も活きる時はこういう力押しの必要な相手にじゃあない。」
「…!」
コンプリートフォームのディエンドから伝わる覇気に気圧されながらも協力を申し出るキバーラだったが、逆に諭されてしまう。
「行きたまえ!」
<AttackRide Blast!>
「分かりました、行きましょう士君!」
「ああ!」
二人は巨大怪人…スコーピオンノヴァの意識が頭上から降り注ぐ光弾に向いているうちに足元を滑り抜ける。
「…」
ダメージとコンプリートフォームの反動による全身の痛みに耐え、胸を張る。
「士が耐えて耐えてここに戻ってきたんだ、僕がこの程度でへばるわけには行かないね…もう一人の僕の、願いの為にも!」
覚悟を新たに、ディエンドはスコーピオンノヴァへと銃撃を再開した。
ビルゲニアまではもう少しというところで、新たな影が二人の前に立ちはだかる。
「あいつは…仮面ライダー⁉」
「愉しそうだな…俺も混ぜろ」
<SwordVent>
大振りながら鋭い一撃を、あえてキバーラがサーベルで受ける。
「夏みかん!」
「先に行ってください士君!必ず…追いつきます!」
一瞬立ち止まろうとした士だったが――
「早くしろよ!」
そう悪態をつくと振り返らずに走り続ける。
「ほぉ…?お前、本当に女か」
「だから何ですか!?」
一度距離を離し、キバーラが叫ぶ。
「女の白いライダーにはいろいろと借りがあってなあ…まあそんな事は関係ないか」
「ええ、お互いに」
「…威勢のいい奴は嫌いじゃない。愉しませてくれよ」
悪意の塊のようなそのライダー・仮面ライダー王蛇は再びキバーラへと突進する。
「本意ではありませんが…立ち塞がるなら!」
迎え撃つべく、キバーラも構えた。
そして――
「おのれ、どうしても邪魔をするか!」
「悪いがそういう性分でね!」
遂に――直接向かい合う。