仮面ライダーディケイド考察小説 第二十二幕 『集結・満を持して』
「ぐわぁっ!」
「ふふふ…よくここまで喰らいついたものだ」
全身傷だらけで地に横たわるディエンドを見下ろし、愉悦に浸るビルゲニア。
まだコンプリートフォームを保っているディエンドに対し彼はすでにスーパービルゲニアへの変身を解いていた。
「あの姿の試運転としては実に素晴らしい時間ではあった。その褒美に、怪人となって俺の配下に成るのであれば命を助けてやらんでもないぞ?」
念動力でディエンドの体を拘束しながら悠然とそう告げる。
「…僕の答えは決まっている」
「お前なんかの手下になって生き延びる…そんなのはごめんだね」
「僕が従うのはお宝、そしてそれを手に入れるための自分自身だ」
最早強引に念動力を突破することは敵わないが、それでもゆっくりと銃口をビルゲニアに向けることはできた。
「フン、ならば死ぬがいい!」
ビルゲニアの剣に強烈な力場が渦を巻き、周囲を揺るがす。それに対し必死にトリガーを引こうとするが、腕を正面に保つのが精一杯で指が動かない。
(どうやら僕も…ここまでか…?)
海東が諦めかけた、その時――
「はああああっ!」
「たぁ――っ!」
「ぬおっ!」
駆け付けた仮面ライダークウガが、勢いそのままにマイティキックを放つ!
ビルゲニアは直撃の寸前にビルセイバーの力場をクウガの方へと向けて勢いを相殺したが、その衝撃でディエンドの拘束が解ける。
「…!」
しかも完全に防ぎ切ったつもりが、その手にはクウガの封印エネルギーが紋章を成していた。
「おのれっ!」
剣を振り払い、気合でそれを消し飛ばす。
「見たことのない怪人だな…」
「どうやら…地獄から舞い戻って来れたようだね」
遂に通常態に戻ってしまったが変身だけは維持し、ディエンドがクウガへと呼びかける。
「海東…って、ボロボロじゃないか!大丈夫か?」
クウガがディエンドに手を差し出すと、
「ありがとう」
「助かったよ」
「危うく死ぬところだった…気を付けたまえ、あの男…ビルゲニアはこれまで戦ったどの怪人をも凌駕している」
「…」
素直に礼を言うのみならず、手を取り立ち上がった挙句、助言まで受けてクウガが絶句する。
「お前、そんなキャラだったっけ…ちょっと怖いぞ」
「余程もう一人の僕は滅茶苦茶だったらしいな…まあいい、僕は僕だ」
「イレギュラーめ、どうやって舞い戻ってきたか知らんが…死にぞこないが二人になったところで同じこと」
「だがその力は侮れん、念には念を入れるとしよう」
ビルゲニアが剣で虚空を切り裂くと、そこから次元のオーロラが出現した。
そこから現れたのは、怪人の群れ、群れ、群れ。
もはや「軍団」と言っていい、それ程の数の怪人が次々に押し寄せる。
「これは…!」
無数の怪人の中にはクウガがこれまで旅した世界の中で接した強敵と互角、さらに上の気配を発するものも居た。
「ふふふ…遊びにも飽きた。お前たちはこいつらに任せ、俺はディケイドを追うとしよう」
「かかれ!」
怪人軍団が一斉に二人へと走り出した。
だがその進路は、上空から降り注ぐ爆撃によって遮られる。
「何…デンライナーが戻ってきただと!?逃げたはずでは…」
爆撃の正体はデンライナー全車両による一斉攻撃。
「悪いが――野郎に迎えに来てもらう趣味は無いぜ」
「貴様…!」
そしてその後に立っていたのは二人の男女。
「士!夏海ちゃんも!」
「…ユウスケ」
士が神妙に、その名を呼んだ。
「済まない士!俺は…俺はお前を…!」
士はユウスケの言葉を目で制し、笑って見せた。
「また会えたんだ、最後まで付き合ってもらうぜ」
その士の表情に、ユウスケも明るさを取り戻す。
「もちろんだ!」
「…信じていたよ、士」
海東が小さく頷いた。
「さあ…始めようか!」
<KAMENRIDE DECADE!>
士がディケイドライバーにカードを装填し、仮面ライダーディケイドへと姿を変える。
その姿は先刻までの「激情態」から、普段のそれへと戻っていた。
「そういや夏海ちゃんは逃げたほうが…」
「いえ、私も戦います。ネオファンガイアの王女として」
「…ネオファンガイア?王女!?」
事情が全く呑み込めていないユウスケの前で、夏海がキバーラを呼び出す。
「変身!」
「何よりも仲間の為に…!仮面ライダーキバーラ、参ります」
白銀の鎧を身に纏い、凛と立つキバーラ。
「ええええええ!?夏海ちゃんもライダーに!?しかもキバーラお前!何で!?」
「君は全く知らなかったんだったな…まあいい、後で説明するから今は目の前に集中したまえ」
もはや驚くばかりのユウスケに、海東がため息交じりに告げる。
「お、おう!」
「行くぜ!」
『『『おう!』』』
士の掛け声に全員が応え、一斉に巨悪ビルゲニアへと走り出した!