仮面ライダーディケイド考察小説 第三十一幕 「BreakDown」
何度でも蘇る、その言葉に憔悴する二人だったが――後ろから歩いてきたディエンドは極めて落ち着いていた。
「いいや…残念ながら君はここで終わる」
「なんだと…なぜそれを!?」
現れたキバーラの手の内にある球体を見て、ビルゲニアの声色に絶望が混じる。
「ネオファンガイアの秘術の一つに、自らの魂を別のものに移し、自らの肉体を操作する術があります」
冷ややかなキバーラの声が、彼を追い詰める。
「これはそれと同じことのできる道具のようですね。あなたの計画ではすべての世界が離散するときに生じるビッグバン級のエネルギーを体に取り込むつもりだったようですが、その時にこれまで破壊してしまっては死んでしまう。必ずどこか近くに隠しているはず…音谷さんがそう教えてくれました」
「やめろ…こんな体で今、今それを砕かれれば、俺は…!」
「せめて穏やかに…さよならです」
キバーラが呪文を囁くと球体が消滅し、中から魂がビルゲニアの体へと戻っていく。
「がはっ…」
よろめき、呻き、体が崩れる。
「私は結局神に…いや…王にすら…なれないのか…」
「おのれ…」
「おのれディケイドォォォォ!」
呪詛を吐きながら、ビルゲニアは大量の灰となって崩れ落ちた。
「やった…のか」
「ああ、肉体はすでに死を迎えていた…これまではあの『魂留球』からほかの怪人を操って肉体を回復しては再生していたようだが、もう二度と蘇ることはないだろう。元々は欠陥があって捨て置かれた旧式のゴルゴムの呪術道具だが、シャドームーンに倒されたときに偶然発動したようだ」
「大丈夫、私が保証します」
未だ信じられないといった様子のディケイドだったが、ディエンドとキバーラの言葉に安堵して腰を下ろした。
「終わったね、士」
「ああ…助かったよ、海東」
「お前もな、ユウスケ」
「へへっ」
「まあ、最後の最後でなつみかんにおいしいところを持っていかれた気もするけどな」
「でも、士君がビルゲニアを倒していなければあの球を砕いても無意味でした。やっぱり士君のおかげです」
「いや…俺の力じゃない。もう一人の俺、そしてこいつらにお前ら、皆の力が無ければ負けてたさ」
静まり返った世界ですっかり安堵しきった四人。
だがそこに、ある声が響いた――四人ともがよく知っている、あの声が。
『おのれディケイドォォォォ!』