不肖不精な置小屋 seasom2

仮面ライダーのS.H.Fの写真を中心に、まったりやってます

仮面ライダーディケイド考察小説 最終幕 「通りすがりの仮面ライダー」

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「おのれディケイドォォォォ!」


 戦いが終わった世界に、突如響き渡ったその絶叫の主は――

「鳴滝!」

 
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「どこにいやがる!」

士が立ち上がり、あたりを見渡す。

「ちょっと待てよ、鳴滝がビルゲニアだったんだろ!?じゃあまだ生きて…」

狼狽するユウスケの言葉に、ディエンドも胸中で困惑した。

「そんな…!」

夏美も力なくうなだれる。

だが帰ってきたのは、素っ頓狂に明るい鳴滝の声だった。


「ははははは!確かに私はあの男に体を奪われた!しかし…おかげで助かっていたのだよ!」


「どういうことだ!」

 士は怒鳴り立てるが、そもそも鳴滝は声だけで姿を見せない。

「私はあの男に唆され、すべての世界を見、探求し、完全なるディケイドシステムを作るために協力した。だが騙されていたとわかったのは間抜けにも殺されて体を奪われた後のことだ。

 だがそのあと、そこの夏美君が使った『時の秘術』によって、私の体がビルゲニアとは別の存在として存在を許されたのだ…ディケイド・ディエンド。お前たち二人と同じようにな!

 復活した私は独自に研究をつづけ、次元を渡ることも可能となった。そして憎いあのビルゲニアに一矢報いるため、ずっとお前たちをつけていたのだ!

 感謝するがいい、時空破断装置による怪人共の召喚が上手くいかなかったのは私がここで操作していたからだ!」


「…そりゃあ…どうも」

 釈然としない面持ちで士が呻く。

「ただし勘違いするなディケイド!私はあくまでお前は憎い!次元を渡れるという、その恵まれた力を持って生まれたお前が!」

「もう八つ当たりじゃないか…」

 ユウスケが呆れ果てる。

「またいずれ会うこともあるだろう…その時までさらばだ、ディケイド!」

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「……」


 しばらく沈黙が続いた後、最初に口を開いたのは士だった。

「あいつ結局何のために声かけてきたんだ…」

「恩を着せたかったんだろう」

「もしかしたら寂しかった…とか?」

 言い捨てるような海東の意見に対し、夏美の言葉はまだ暖かかった。


「そう言えば言い忘れていたが、ディケイド!」

「まだ居るのかよ!」

「時空破断装置を改良し、何とかこの状態を保っておけるようにしているが、流石に限界がある。君の持っているライダーカードを本来の世界に戻し、開放することで一つ一つ世界が元の位相へと戻るはずだ。頼むぞ」

 そう言うと、今度こそ鳴滝は連絡を絶ったようだった。

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「まさかこの腐れ縁がまだ生きてたとはな…」

「いいじゃないですか、あの鳴滝さんは大丈夫そうですし」

「どうかな」

 士はため息をついた。

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「さて、そろそろ僕は失礼するよ」

 海東はそう言うと踵を返し、歩き始める。

「どこに行くんだよ?」


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「僕はトレジャーハンターだ、僕が行くところはお宝のある場所と決まってる」

 ユウスケの言葉に、海東は楽し気に答えた。

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「そうか…まあ、せいぜいこれが今生の別れにならないように気をつけろよ、海東」

「君もね、それと」

 士の悪態をさらりと受け流すと、

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ディエンドライバーをユウスケに投げ渡す。

「お、おい、これお前の大事な…」


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「そっちはもう一人の僕の忘れ形見だ、どうせもう使うこともないだろう。君もそれを使えば、必要な時に次元を移動できるはずだ」

「そっか…ありがとう」

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「士、またね」

 そう言うと出現した次元の壁の中へと入っていく――

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「あ、おいそれは!」

 サタンサーベルを携えて。

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「あいつ…ちゃっかり自分の目的を果たしやがった」

「ま、あんなの野ざらしにしてても困るし、海東が持ってるなら悪用されることもないだろ…じゃあ俺も、一度自分の世界に帰るかな」

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「長い旅だったけど、楽しかった!落ち着いたら遊びに来てくれよ、士、夏美ちゃん!」

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「ああ…そのうちな」

 しっかりと握手を交わし、ユウスケもディエンドライバーが呼び出した次元の壁をくぐっていった。

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「さて…と」

静かな世界に残ったのは、士と夏美の二人だけとなった。

「あの…」

「ん?」

「私たちで始まったんですよね、この旅は」

「ああ」

「いくつもの世界を旅して、いろんな人たちと会って、時々捕まったりして」

「ユウスケなんか改造されたしな」

「そうでした!ふふっ…」

会話は弾んだ。けれど…

「名残惜しいところ悪いが、そろそろ俺たちも行かないとな」

「…やっぱり寂しいですね」

「どうせまた会えるさ、会おうと思えば、な」

「…はい」

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「じゃあまた、なつみかんからスタートだな」

「え?」

「ライダーを送り届ける旅の、スタートだ。」

かつて頑なで偏屈だった彼の差し出された手は、柔らかく開かれていた。

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「じゃあ…お願い」



こうして彼の旅は一度、終わりを告げました。



でもライダーたちを皆元の世界へ送り届けた後は、



きっとまた自分を受け入れてくれる世界を探すのだと思います。



そしてその度に人と、世界と繋がっていく。



だけど彼は名前を聞かれれば、こう嘯くのでしょう。





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「通りすがりの仮面ライダーだ」











~完~