仮面ライダージオウ考察(?)小説 第2話 『Wのダブル/探偵と王様』
少女は名を、伊波吊幻花と名乗った。
そして彼女が語る事の起こりは、この街が『風都』と呼ばれるはずだったころに遡る。
この街――今は名前も無く、特別経済特区第一号、と呼ばれている。当初はこの街に集まる風の力を使った風力発電を中心に、街づくりが行われるはずだった。しかしその第二の矢である地下資源の発掘調査中、事故が起こり計画は頓挫。そして建設予定だった超巨大な風力発電設備、風都タワーも設立困難となり、結果すべてが中途半端なまま国もこの街を放置してしまった。
だが実は、その地下資源を狙って暗躍している組織がある――
「そしてそれが、君のお父さんが残した地下資源を得るための鍵だと」
鳴海探偵事務所――そこに案内され、ソウゴは一口付けただけのコーヒーを持て余しながら少女の説明を聞いていた。
このコーヒー、翔太郎が淹れてくれたものなのだが、えらく不味い。
「そう。そして私は…その地下資源を手に入れて、この街をやり直したいの」
「やり直すって、どうやって?」
ソウゴが尋ねた。
地下資源と聞いてイメージするのは石油や天然ガスの類だ。そんなものを個人で手に入れたところで、扱うどころか売るのにも困るだけだろうと思ったからだ。
「全部…やりなおすの」
だがその問いには答えなかった。
彼女は翔太郎に負けず劣らず黒い服に身を包んでいて、ぶつかったときは気が付かなかったがソウゴ自身と同い年くらいに見える。
「この街は間違ってるから。あの事故のせいで、ああいうろくでもない連中が幅を利かせてる。全部許せない…!」
その言葉には、鬼気迫るものがあったが――翔太郎は物憂げに視線を伏せると、幻花から預かった箱を机の上に置いた。
「駄目だ。この依頼は受けられない」
「なんで!」
「確かに今のこの街は、あまりいい状況だとは言えねえ」
帽子をフックに預けて、幻花の正面に腰かける。
「だけどな…全部間違ってるとは思わない。一体これで君が何をしたいかは検討もつかないが、俺はこの街を泣かせたくないんだ。この箱は警察に預けて、君もしばらく保護をうけるといい。信用できる人達を知っているから、そこまでは護衛するぜ」
ソウゴには真摯な言葉に感じたが、世間を知らない少女は依頼を断られたばかりか意見を拒絶されたのが頭にきたのだろう。席を立つと箱をひったくって上着のポケットに入れた。
「もういい…噂通りのハーフボイルド!」
「ああ!?ちょっ…おい!」
そう言うと扉を開け放って出て行ってしまう。
「ったく…!」
「俺も行くよ」
困り顔で追いかけようとする翔太郎にソウゴも付いていく。
「おいおい、ソウゴは関係ないだろ?」
「あるよ、俺は王様になるのが夢なんだ。そのためには、現状に不満がある民の言葉は無視できない」
「おおう、デカい夢だなそりゃ」
今度は翔太郎がソウゴの発言に少し引く番だった。だが彼もまた、ソウゴのスタンスを笑うことは無かった。
「それに着いていかないと、迷子のまま事務所に置き去りだからね」
「そうだな。それじゃ今だけ相棒を頼むぜ、未来の王様」
「相棒か、いいね」
もうすでに随分小さくなった少女の背中を追いかけて、二人は街を駆ける。
そして彼女が語る事の起こりは、この街が『風都』と呼ばれるはずだったころに遡る。
この街――今は名前も無く、特別経済特区第一号、と呼ばれている。当初はこの街に集まる風の力を使った風力発電を中心に、街づくりが行われるはずだった。しかしその第二の矢である地下資源の発掘調査中、事故が起こり計画は頓挫。そして建設予定だった超巨大な風力発電設備、風都タワーも設立困難となり、結果すべてが中途半端なまま国もこの街を放置してしまった。
だが実は、その地下資源を狙って暗躍している組織がある――
「そしてそれが、君のお父さんが残した地下資源を得るための鍵だと」
鳴海探偵事務所――そこに案内され、ソウゴは一口付けただけのコーヒーを持て余しながら少女の説明を聞いていた。
このコーヒー、翔太郎が淹れてくれたものなのだが、えらく不味い。
「そう。そして私は…その地下資源を手に入れて、この街をやり直したいの」
「やり直すって、どうやって?」
ソウゴが尋ねた。
地下資源と聞いてイメージするのは石油や天然ガスの類だ。そんなものを個人で手に入れたところで、扱うどころか売るのにも困るだけだろうと思ったからだ。
「全部…やりなおすの」
だがその問いには答えなかった。
彼女は翔太郎に負けず劣らず黒い服に身を包んでいて、ぶつかったときは気が付かなかったがソウゴ自身と同い年くらいに見える。
「この街は間違ってるから。あの事故のせいで、ああいうろくでもない連中が幅を利かせてる。全部許せない…!」
その言葉には、鬼気迫るものがあったが――翔太郎は物憂げに視線を伏せると、幻花から預かった箱を机の上に置いた。
「駄目だ。この依頼は受けられない」
「なんで!」
「確かに今のこの街は、あまりいい状況だとは言えねえ」
帽子をフックに預けて、幻花の正面に腰かける。
「だけどな…全部間違ってるとは思わない。一体これで君が何をしたいかは検討もつかないが、俺はこの街を泣かせたくないんだ。この箱は警察に預けて、君もしばらく保護をうけるといい。信用できる人達を知っているから、そこまでは護衛するぜ」
ソウゴには真摯な言葉に感じたが、世間を知らない少女は依頼を断られたばかりか意見を拒絶されたのが頭にきたのだろう。席を立つと箱をひったくって上着のポケットに入れた。
「もういい…噂通りのハーフボイルド!」
「ああ!?ちょっ…おい!」
そう言うと扉を開け放って出て行ってしまう。
「ったく…!」
「俺も行くよ」
困り顔で追いかけようとする翔太郎にソウゴも付いていく。
「おいおい、ソウゴは関係ないだろ?」
「あるよ、俺は王様になるのが夢なんだ。そのためには、現状に不満がある民の言葉は無視できない」
「おおう、デカい夢だなそりゃ」
今度は翔太郎がソウゴの発言に少し引く番だった。だが彼もまた、ソウゴのスタンスを笑うことは無かった。
「それに着いていかないと、迷子のまま事務所に置き去りだからね」
「そうだな。それじゃ今だけ相棒を頼むぜ、未来の王様」
「相棒か、いいね」
もうすでに随分小さくなった少女の背中を追いかけて、二人は街を駆ける。
「随分向こうは面白いことになってるな」
「そのようだね」
思わぬ来訪者と、思わぬ問題。
それを眺めながら僕は…そう。嫉妬だ。久々の感情で忘れていた。あの常磐ソウゴに嫉妬しているんだ。
「しかし君の力は前会った時よりもさらに便利になっているね、門矢士」
「そりゃどうも」
「フィフティーンと戦った時以来かな?あの時も自由に時空間を飛び越えていたが、映像を見せること『だけ』もできるとは、非常に興味深い」
「色々あったからな」
そう、この男。
門矢士、仮面ライダーディケイドは星の本棚にも情報が無い。少なくともこの地球上の存在、あるいは存在したことのあるものは記録が残るはずなのに、どの検索にも引っかからなかった。
かつて共に戦った時に、彼が僕らを組み替えて放った『ファイナルアタックライド』すら、仮面ライダーWとしての情報にも記載されていなかった。
彼が、世界に受け入れられていない故なのか。それとも…
「そんなことはどうでもいい。俺がここに来たのは、確認のためだ」
「そうだったね」
常磐ソウゴ、仮面ライダージオウ。そしてタイムジャッカー。
「確かに僕がここにいるのは、矛盾による崩壊を防ぐためだ」
彼らが『ライドウォッチ』として仮面ライダーの存在を奪うことによって、そのライダー達が行ってきたことも『なかったこと』になってしまう。つまり僕と翔太郎がミュージアムと戦ってきたことも、その野望を阻止したことも無くなる。
それを放置すれば、阻止されなかったミュージアムの野望が達成された世界が生まれてしまう。
もっとも、それまでにはタイムラグがある。
それは僕…フィリップが居なければこの星の本棚からガイアメモリを生成することが困難、あるいは不可能であり、『ダブル』だけが居てもガイアメモリが存在はできないからだ。…その代わりの技術が生まれるまでは。
「で、この星の本棚にお前が要るおかげでお前の代わりは現れない、と」
「そういうことだね。ダブルの力はスウォルツを名乗るタイムジャッカーに奪われたけれど、その前に紘汰から情報を貰えたおかげで助かった」
「だが…このままだと困ったことが起こりそうだぜ」
映像には、僕の良く知ったものが、異質な姿に変貌している様が映っている。
仮面ライダーW…アナザーダブル。
「そのようだね」
思わぬ来訪者と、思わぬ問題。
それを眺めながら僕は…そう。嫉妬だ。久々の感情で忘れていた。あの常磐ソウゴに嫉妬しているんだ。
「しかし君の力は前会った時よりもさらに便利になっているね、門矢士」
「そりゃどうも」
「フィフティーンと戦った時以来かな?あの時も自由に時空間を飛び越えていたが、映像を見せること『だけ』もできるとは、非常に興味深い」
「色々あったからな」
そう、この男。
門矢士、仮面ライダーディケイドは星の本棚にも情報が無い。少なくともこの地球上の存在、あるいは存在したことのあるものは記録が残るはずなのに、どの検索にも引っかからなかった。
かつて共に戦った時に、彼が僕らを組み替えて放った『ファイナルアタックライド』すら、仮面ライダーWとしての情報にも記載されていなかった。
彼が、世界に受け入れられていない故なのか。それとも…
「そんなことはどうでもいい。俺がここに来たのは、確認のためだ」
「そうだったね」
常磐ソウゴ、仮面ライダージオウ。そしてタイムジャッカー。
「確かに僕がここにいるのは、矛盾による崩壊を防ぐためだ」
彼らが『ライドウォッチ』として仮面ライダーの存在を奪うことによって、そのライダー達が行ってきたことも『なかったこと』になってしまう。つまり僕と翔太郎がミュージアムと戦ってきたことも、その野望を阻止したことも無くなる。
それを放置すれば、阻止されなかったミュージアムの野望が達成された世界が生まれてしまう。
もっとも、それまでにはタイムラグがある。
それは僕…フィリップが居なければこの星の本棚からガイアメモリを生成することが困難、あるいは不可能であり、『ダブル』だけが居てもガイアメモリが存在はできないからだ。…その代わりの技術が生まれるまでは。
「で、この星の本棚にお前が要るおかげでお前の代わりは現れない、と」
「そういうことだね。ダブルの力はスウォルツを名乗るタイムジャッカーに奪われたけれど、その前に紘汰から情報を貰えたおかげで助かった」
「だが…このままだと困ったことが起こりそうだぜ」
映像には、僕の良く知ったものが、異質な姿に変貌している様が映っている。
仮面ライダーW…アナザーダブル。