仮面ライダージオウ考察(?)小説 第3話 『Wのダブル/切り札の名は』
「ようやく追いついたよ」
「まったく、困った子猫ちゃんだ」
息を切らしながら、ソウゴと翔太郎は幻花に声をかける。
「何よ、もういいって言ったでしょ」
「確かに、依頼は受けられねえが、君に泣かれるわけにも行かないな」
翔太郎は帽子の角度と呼吸を整えてニヒルに(少なくとも本人はそのつもりだろう)笑う。
「この街に、涙は似合わない」
「…クサッ」
「なにい?」
「まあまあ、それよりもさ」
ソウゴが幻花の手に握られた箱を指さす。
「君を守るにしても…その箱の中身ってなんなの?」
「…この街の地下に眠るエネルギーを引き出すための鍵よ。あいつらはどうもその使い方を知ってるみたいだけど、私には見当もつかない」
質問に答えながら、箱を開けた少女の顔が青ざめる。
「どうしたの?」
「中身が…無い!」
ソウゴと翔太郎がのぞき込むと、箱の中には細長い何かが六つ入っていた形跡が残っているだけだった。
「探し物はこれか?」
「!」
嘲笑する声にソウゴたちが振り向くと、先ほど引き下がったならず者達が下卑た笑いを浮かべている。
その手には、確かに箱の中に残された形跡に近い形の物体が握られていた。
「君、中に入っていたのはあれでいいんだね?」
「…ああ、ただなんかおかしなものがくっついてるけど」
「そっちは俺が良く知ってる」
(六人も同時に相手したことなんかないからな…)
「派手に暴れていいって言われてるからな」
六人ともライドウォッチを起動し、その姿を変貌させる!
『サイクロン!』
『ジョーカー!』
『ヒート!』
『メタル!』
『ルナ!』
『トリガー!』
『ジョーカー!』
『ヒート!』
『メタル!』
『ルナ!』
『トリガー!』
「全員同じ形で色違い!?」
面食らったソウゴはつい声を上げてしまうが、呼吸を整えて冷静さを取り戻す。
「…翔太郎と君は逃げて」
「何言ってんの!」
「大丈夫」
翔太郎が少女を避難させるのを見て、ソウゴはジクウドライバーをセットする。
「俺は、仮面ライダーだから」
『ライダー・タイム!』
『カメンライダー・ジオウ』
ソウゴはジオウへと変身し、六体のアナザーライダーへと突撃する!
「ヒャッハァ!」
緑色のアナザーライダーが風を巻き起こしてその勢いを殺すと、続けて銀色が大きい鉄棍を振り回して襲い掛かる。
「邪魔だ!」
銀色を押し退けながら黒色のアナザーライダーが鋭い拳を走らせたと思えば、その後ろから青色が味方に構わず銃撃を放つ。
「何だこいつら…」
怒涛の攻勢に防戦一方のジオウだが、焦りは無い。
(全然連携が取れてないから、怖くはないけど…どこから崩す?)
見たことも無いアナザーライダーということは、完全に倒す術がない。タイムジャッカー達が現れれば何度倒しても戦線に復帰することを考えれば、逃げるにしても一度全員を行動不能にしたかった。
「黒だ!」
そこに翔太郎から指示が入る。
「黒い奴をまず倒せ!」
「あなたもあの化け物を見たことあるの?」
「いや、何故だかわからねえが…俺はあいつらを知っている…気がする」
聞いた幻花も、答えた翔太郎も分からない。
だがジオウにはその理由がなんとなく分かっていた。
だがジオウにはその理由がなんとなく分かっていた。
「オーケー!」
その直感を信じ、ジオウはもう一つのライドウォッチを取り出して右側に装填する。
『アーマータイム!カメンライド!Wow!ディケイ・ディケイ!ディ・ケ・イ・ド!』
そして、銃撃と銀色の鉄棍を躱して黒色のアナザーライダーの懐に潜り込むと、その体を上空高く蹴り上げた!
「ぐあああっ!」
苦悶の声を上げながら舞い上がる黒い体を、突如現れた巨大なカードの映像が取り囲む。
『フィニッシュタイム!アタックタイムブレイク!』
「ちょっと痛いかもね!」
カードを次から次にすり抜けながら、連続蹴りを浴びて黒いアナザーライダーは爆裂四散した。
軽やかに地上に降り立ったジオウ・ディケイドアーマーの肩を叩く翔太郎。
「いや、なんか違うだろ」
「そうかな?…知ってるの?」
「ああ、おかげで思い出したぜ」
その手に握られているのは、ソウゴが初めて見るドライバーだった。
「俺が何者で、この街が本当は何なのか」
翔太郎がドライバーを装着すると、その手に先ほどの六人が持っていた物に酷似した四角い物体を握りしめる。
『ジョーカー!』
「それは…」
「ガイアメモリ。この街を泣かす悪党を、懲らしめてやるための切り札さ」
ドライバーにジョーカーメモリを装填し、力を解き放つ!
『ジョーカー!』