仮面ライダージオウ考察(?)小説 第6話 『Wのダブル/図書室ではお静かに』
「くそっ、さっきまでのアナザーライダーとは比べ物にならんぞ!」
アナザーダブルの攻撃を受け止めたゲイツが、そのまま強引に突き飛ばされる。
「ライダーパンチ!」
「『ライダーパンチ!』」
アナザーダブルのジョーカーサイドが、ジョーカーのマキシマムドライブを同質の一撃で相殺する。負けじと翔太郎は続けてマキシマムドライブを放とうとスロットに手を伸ばすが、一瞬頭の中が真っ白になるような衝撃に襲われてふらついてしまう。
「くそっ、またあれか…!」
存在を奪われたことにより、仮面ライダージョーカーもまた翔太郎のダブルとしての記憶ごと消えようとしている。
「ウォード、私たちの目的はこの人たちと戦うことじゃない。『そうだな。さっさとあの場所へ行くとするか』」
「待て!」
「大丈夫、翔太郎!」
記憶を必死に繋ぎ止めようとする翔太郎に、ソウゴが駆け寄る。
「ああ、なんとかな…だが残された時間はそう長くはないようだ。俺たちも追うぞ」
「うん」
ジオウもライドストライカーを召喚すると、エンジンを噴かせる。
「乗って!」
ゲイツの追走を気にもせず、目的の場所にたどり着いたのかアナザーダブルは風を止めると大地に降り立った。
「『ここだな』」
彼らにとっては座標としてだけしか知らない場所だが、本来は風都タワーが立っていたはずの場所だった。計画が頓挫したためただの公園となっているが、この場所には意味がある。
「この力で、地下に眠る力を引き起こす。『そしてその力を得た時、私たちは更なる超生物へと進化する』」
アナザーダブルの体の周りに淡い緑色の輝きがちらつき始め、それを取り込んだ部分から次第に外皮がプリズムへと変化していく。
「させるか!」
「『邪魔をするなよ、ゲイツ』」
「くっ…!」
放り投げられたライドストライカーから跳び、そのまま攻撃するも全ていなされてしまう。
「ならば!」
『フィニッシュタイム!ターイム・バースト!』
タイムバーストを発動させ、ゲイツの体が天高く飛び上がる。そして第一撃が繰り出されるが――
「!」
それを避けるそぶりもなく、遅れてくる本当の攻撃を鉄棍で払いのけた。
「ぐはっ…馬鹿な!」
「『お前のデータは全て検索済みだ』苦しまずに消えられるようにしたいから、抵抗しないで」
アナザーダブルがヒートメタルへと変化し、鉄棍が激しい炎に包まれる。
「『この一撃は、お前のボディでは耐えられないぜ!』」
振り回される鉄棍の炎が蛇のようにゲイツへと襲い掛かるが――
『ウィザード!スクランブルタイムブレイク!』
激しい水流がその炎を和らげ、同時に土の壁がアナザーダブルの鉄棍を拘束した。
「『邪魔するか…ジオウに、前任者』」
「もちろん。君にこの街をめちゃくちゃにされると、俺が王様になったときに困るからね」
「『まあいい、お前の全てを検索してやるぞ…仮面ライダージオウ!』」
再び姿をサイクロンジョーカーに戻すと、アナザーダブルがジオウ・ディケイドアーマーへと襲い掛かる。
「くっ、攻撃が全然当たらない!」
「『攻撃パターンは全て検索した、そして、お前の装甲を貫ける攻撃は…!?』」
攻勢に転じたアナザーダブルの動きが鈍る。
「どうしたの、ウォード!『ちぃっ、お前は…!』」
『やれやれ。一日に三人も来客があるとは、賑やかな日だ』
この星の本棚に立ち入ったのはエクストリームの力に目覚めた若菜姉さん以来一人もいなかったが、こうも立て続けに入ってこられると少し不愉快だ。
「テメエ、何者だ!」
「俺か?俺は通りすがりの仮面ライダーだ、覚えとけ!」
検索の要領も分からず本棚を荒らしまわるアナザーダブルの前に、僕よりも早く門矢士が立ちはだかった。
『いいのかい?本来なら僕が打って出るべきだが』
「お前が戦うべきなのは、ここか?」
「さっさと行ってやれ」
ネオディケイドに変身した士は、僕と会話する片手間に圧倒的な強さでアナザーダブルを追い込む。
「さっきから、俺の方を見やがれ!」
癇癪を起して、マキシマムドライブに相当する力を引き出すとジョーカーエクストリームのような技を繰り出すが、ネオディケイドにはそよ風のようなものだろう。
「図書館で静かに出来ない奴は退室願うぜ」
『ファイナルアタックライド・E・E・E・EVOL!』
まともに喰らったアナザーダブルの意識体は、断末魔ごとそれに飲み込まれて強制的に星の本棚とのリンクを切断されたようだ。
「邪魔者も、消えた」
『…だが、僕がここから出れば世界の接近が加速する。そうなれば、全てはスウォルツの計画通りになる』
「そうかもな」
変身を解除した士が、皮肉に笑った。
「それを正面からぶっ壊してこそ、俺たち仮面ライダーだろう」
『…流石、世界の破壊者は言うことが違うね』
「そりゃあどうも」
『じゃあ、後のことは頼むよ、門矢士』
お前の罪を数えろ。
その言葉には、自分への戒めも必要だ。
今回の僕の罪は、この今の記憶…正当な理由にかこつけて自分自身を守るために逃げてしまったこと。
あのアナザーダブルを倒すには、僕たちWの力が必要だ。
ならば最後まで、恐れずに戦うことを選ぼう…翔太郎とともに。