仮面ライダージオウ考察(?)小説 第7話 『Wのダブル/相乗り2018』
「『くそっ、検索できなくなっちまった』」
「何が起こったかわかんないけど、今がチャンスかも!」
ジオウがアナザーダブルと奮闘する姿を、ボロボロになりながらも翔太郎はしっかりと見つめていた。
「ぐあっ…」
しかし辛いのは全身の痛みよりも、時間改竄による記憶消失、その喪失感。強い意志で何とか記憶を保ってはいるが、最早限界に近い…だが。
「後輩が頑張ってるってのに、呑気に記憶を失ってなんかられるかよ、なあ…!フィリップ!」
「そうだね、翔太郎」
虚空への呼びかけの、つもりだった。
呼ばれた名前の主は翔太郎の後ろから現れてその背中を叩く。「…フィリップ!」
「久しぶりだね」
「出てきて大丈夫なのかよ、例の時間のパラドックスって奴は」
「門矢士に発破をかけられてね…託すことにしたよ、僕たちのダブルの力を」
「そうか」
久しぶりに相棒に会えた喜びと、そしてすぐに訪れるこれまでの自分たちとの別れに複雑な顔をする翔太郎に、フィリップは笑いかける。
「相変わらずのハーフボイルドだね」
「うるせえよ」
「まあ、君もそうだろう、翔太郎」
サイクロンメモリの起動音とともに、フィリップがダブルドライバーを腰に巻く。「ああ、この街を泣かせる奴をのさばらせておくわけには行かねえ。それにあいつは…ソウゴはきっと、Wを受け継ぐのに相応しい奴だ」
『サイクロン!』
「行くぜ、フィリップ!」
『ジョーカー!』
風都の守護者がマフラーをなびかせ、アナザーダブルへと駆け出す。
その後ろで場に倒れそうになるフィリップの体を受け止めたのは、門矢士。
「頼んだぜ」
そしてフィリップを少し離れた木の傍に横たえると、次元の扉に姿を消した。
「おりゃあ!」
「ぐあっ!」
仮面ライダーW・サイクロンジョーカーがアナザーダブルを殴り飛ばす。
「もしかしてそれも翔太郎?」
「いや、俺達は『二人で一人の仮面ライダーさ。僕はフィリップ、このガイアメモリの力で翔太郎と一体化している。よろしく、未来の魔王』」
「『負けて…たまるか』」
アナザーダブルが立ち上がり、仮面ライダーダブルへと踊りかかるがそれを軽やかに躱すとジオウへとあるものを投げ渡す。
「これは…!」
それは、ダブルライドウォッチ。
「『それが必要だろう、受け取りたまえ』」
「おお…!なんか、行ける気がする!」
ダブルライドウォッチをライドヘイセイバーに取り付けて、刀身にダブルの力を宿す。
「祝え!」
その瞬間、倒れているフィリップの近くから突如ウォズが現れて声を張り上げる。
そちらの方は振り返りもせず、ジオウはそのまま攻撃へと移行する。
『ダブル!平成ライダーズ・アルティメットタイムブレーク!』
「さあ、お前の罪を、教えて?」
「なんだそりゃ!『ちょっと違うね』」
翔太郎とフィリップの突っ込みを他所に、緑と黒の疾風を纏った強力な乱れ切りが、アナザーダブルを切り裂く!
「いやああああ!」
「ぐあああああ!」
泣き別れになったサイクロンサイドから幻花の声が、ジョーカーサイドからはウォードの声が響き渡り、アナザーダブルは爆発してその姿を失った。
「ありがとう、翔太郎に、フィリップ」
「なあに、形は変わろうと俺たちは、この街を守らずにはいられない」
「それがこの街の仮面ライダーだからね」
翔太郎とフィリップはそれぞれソウゴの肩を叩く。
「あとは頼んだぜ、魔王さんよ」
「たとえ悪魔の力でも、世界を悪くするとは限らないからね…信じているよ」
振り返ってソウゴが応えようとした時には、既に二人の記憶は改変によって失われていた。
「来人、何で俺こんなところにいるんだっけ?」
「さあ。僕も何か調べ物をしていた気がするが…まあ、取りあえず事務所に帰ろう」
そんなやり取りを見送りながら、ソウゴは小さく、確かに応える。
「ああ、必ず俺は最高最善の魔王になるよ」