仮面ライダーディケイド考察小説 第二十五幕 「My name is Diend」 後編
まるで自らの魂が導いたかのように。
そうとは知らず、もう一つのディエンドライバーにディエンドの手が届いた。
「所詮、君はそこまでだったということか」
「…!」
憎しみが込められた声に視線を向けると、そこに立っていたのは――仮面ライダーディエンド。
驚きはしなかった――海東は知っていた。
自分が時間軸の修正がもたらした「もう一人の自分」であるということ、そして世界が選んだのは「もう一人の自分」である己自身であること。
そして――
「がっ!?」
オリジナルが、それを激しく憤っているということも。
「無様だな…!僕ならこうはならない!」
「…!」
抵抗できない海東を、オリジナルは酷く責めた。
「僕なら!どんな手を使ってでも!ビルゲニアを!殺して!士を!助けた!それがお前はあの取るに足らない!男に助けられた挙句!こうして!無様に!寝ているだけか!」
何度も――何度も何度も頭を地面に叩きつける。
「今すぐそのドライバーを渡したまえ」
オリジナルは冷静さを取り戻し、海東に告げる。
「ディエンドライバーには『仮面ライダーゼロノス』に使われていた『存在のバックアップ』機能が内蔵されている…代用品として突然世界に作り出された君が、オリジナルである僕のこれまでの記憶を保持しているのは、その機能が作用したからだ。それは覚えているね」
「…つまり君は、それを使って、この『僕』に…なろうと?」
「そうだ。出来損ないが『僕』を名乗り、生きていくのは許せない。この僕はもはや残留思念だけの存在だが、ディエンドライバーのメモリーを書き換えれば、君を乗っ取ることは出来る。
その器を――寄越したまえ」
「随分…好き勝手に言ってくれるね、オリジナル!」
「君は、僕を『オリジナル』と呼ぶのなら…君は何だ」
ようやく立ち上がった海東に、オリジナルが問いかけた。
「僕は僕だ」
ディエンドライバーを構えたその動きに力が戻る。
「求めるものはすべて手に入れる!それがたとえ、
「僕自身からでも!」
「…言うね」
オリジナルが、微かに笑う。
「忘れていなければいい、僕の願いをね」
「このカードは…!」
「ただし覚えておくんだね。僕の名は『DIEND』。
いつでも君の、隣に居よう」
投げつけられたカードと、妄執の言葉だけを残して。
「…!」
ディエンドは現実に引き戻されていた。
危機的な状況は何一つ変わってはいない。
むしろ進んでいなかったのが有難いくらいだった。
だがその左手に握られていたのは、あのカードが装填された『ディエンドライバー』。
「ほう…まだ立つか」
「残念ながら君は、僕に止めを刺すチャンスを失ったんだ」
「何?」
勝ち誇るスコーピオンノヴァに、彼は言い放つ。
「永遠にね!」
ディエンドライバー同士を噛み合わせ、グリップを引き出す!
『FINAL KAMEN RIDE』
『DIEND OVER GEAR!』
「ならば味わいたまえ」
だが海東自身には分かる。
『AttackRide Blast!』
これが、『死と終わり』の協奏曲となることを。
「バ、バカな⁉」
幾度もの攻撃にも揺るがなかったスコーピオンノヴァの巨体がたじろぎ、痛みに悶える。
「オオッ!」
ディエンドは攻めながらも毒針による強襲を容易く避ける。
そして生まれた隙にスコーピオンノヴァの真下へと潜り込むと、
「ぐおっ!」
強烈な射撃の連打で上空へと叩き上げる!
「おのれ…おのれおのれおのれぇ!」
ヒステリックな叫びが周囲に響き渡った。
「私の邪魔をするな…仮面ライダーァァァァ!」
地上に尾を突き刺して強引に体を着地させると、全身からコズミックエナジーを放ち始める。
「この世界が砕け散れば、ビルゲニアは私に『フォーゼ』を確実に抹消できる力を与えてくれると言った!この超新星爆発で、貴様ごと全てを吹き飛ばしてくれる!」
「それは困る、僕はまだ君からお宝を貰っていない」
そう言うとディエンドは二丁のディエンドライバーにカードを装填し、
振り抜いて発動させる!