不肖不精な置小屋 seasom2

仮面ライダーのS.H.Fの写真を中心に、まったりやってます

仮面ライダージオウ考察(?)小説 第一話 『Wのダブル/迷子の魔王』

 あれからどれほどの時間が経ったのかな?
 もう何年も経ったような錯覚もあったが、読み終えた本を数える限りまだ大した日数も過ぎてはいないだろう。この場所で一人過ごすことが昔は当たり前だったが、彼らと出会い、得たものが大きすぎた。それでも僕は世界を守るために、それらを捨ててここで閉じこもることを選んだ。
「よう」
 だが、いつだって。
 また誰かが、突然ドアを叩く。



 常磐ソウゴ、仮面ライダージオウが未来の自分、最低最悪の魔王『オーマジオウ』と直接対面し、一蹴されてから数日。
 オーマジオウが明光院ゲイツによって倒された未来から来たというもう一人のウォズ――通称『白ウォズ』も乱入し状況が混迷する中、ソウゴはというと。
「どこ、ここ?」
 迷子になっていた。
 携帯電話のバッテリーも切れて、共にこの街を訪れたゲイツツクヨミの二人とはぐれてしまい、大通りの方を目指したはずが次第に入り組んだ路地裏へと望まぬ歩みを進めている。
 どうせ黒ウォズは何処からか見ているだろうと思うが、まだ姿は現さない。
 なんとなく心細くなりながら、ここしばらく一人きりと言う時間が無かったことに気が付いてソウゴは少し可笑しくなった。
「いっつもゲイツツクヨミに見張られて、ウォズも付きまとってたからなあ…」
 呑気にそんなことを呟いていると、路地の角から帽子をかぶった人が飛び出してきて、避ける間もなく二人同時に悲鳴を上げて激突する。
「いったた…」
「おうおう!もう逃げられねえぞ」
 そういわれて顔を上げたソウゴを見下ろすのは、ざっと六人ほどだろうか。柄の悪い男共が、倒れているソウゴを取り囲む。
 明らかにその視線はソウゴの後ろに倒れている者へと向けられていた。
「邪魔だ馬鹿!」
 後ろにいた彼は立ち上がりながら駆けだそうとするものの、すでに回り込んでいた三人に道をふさがれてしまう。ソウゴの正面に立っていた男たちもソウゴを無視して逃げようとする彼に詰め寄った。
「さっさとそれを返しやがれ」
「うるせえ!元々これは俺達のものだ!お前らに持ってかれる筋合いはねえ!」
 威勢よく啖呵を切るが、六対一の上に、どう見ても彼は小柄で一対一だったとしても喧嘩で敵いそうにはない。
「なら痛い目見るんだな!」
「ちょっと待った!」
 状況は分からないが、放ってはおけなかった。ソウゴの叫びに暴漢の振り上げた腕が制止する。
「何だテメエ」
「何があったか知らないけど、暴力はいけないと思うよ」
 ソウゴは飄々としながら、降りかかってくるであろう攻撃を警戒する。
「あのなあ、こいつは俺らの物を盗んだんだ。それを返してもらうだけなんだよ。わかったら引っ込んでな、ガキ」
「そっちの人は、あんた達に盗られたって口ぶりだったけど?」
「いい人気取りは他所でやんな!?」
 大振りの拳を躱しながら、その背後に回る。
「別に。ただ俺は、俺の民が無駄に怪我するのが嫌なだけだよ」
「わけのわからねえことを…!」
 もう一人の蹴りも軽やかに避けるが、狭い路地に次の逃げ場も無くなりソウゴも一緒に取り囲まれてしまう。
(困ったな…)
 まさかアナザーライダーでもない一般人相手に変身するわけにもいかず、いつもならしゃしゃり出てくるはずのウォズも中々現れない。
(こりゃ俺の方が一・二発我慢しなきゃいけないかもね)
 ようやく危機感を覚えた時にはすでに遅し、気が付かない間に後ろからソウゴ目掛けて大男の拳が飛んできて――振り返ったソウゴの目に映ったのは、その大男が腕を絡めとられた姿だった。
「ぐああああ!」
 腕を背中側に極められて、一瞬後には大男の体が地面にひれ伏していた。
「いい大人が揃いも揃って子供二人をカツアゲか?情けねえな」
 呆然とするソウゴの前に、盾が如く立つのは黒い帽子に黒いジャケットを着た、白いシャツの男。帽子のつばを持ち上げて、取り囲む全員ににらみを利かせる。
「こいつ…左か!」
「ひだり?」
 ソウゴは左側を見るが、そういう意味では無かったようでそこにはただ壁があるばかりだった。
「俺もすっかり有名になっちまったな。で、やるか?相手になるぜ」
「…覚えてろよ」
 あれほど威勢の良かった連中が、あっという間に踵を返して去って行ってしまう。
「ありがとう、助かったよ!」
 ソウゴが帽子の男に礼を言うと、彼は帽子を目深にかぶって笑う。
「なあに。俺はただこの街にたかる蝿を振り払っただけさ」
「おお…」
 本人はかなり決まっているつもりなんだろうが、全体的にちょっと形に入り過ぎていて、クサい。
 やや引き気味に、だがソウゴは何故か聞かずにはいられなかった。
「俺は常磐ソウゴ、あんたは?」
「左翔太郎。探偵さ」
「探偵…左翔太郎…あなたがあの!」
 ソウゴがよろしくと言うよりも早く、その名前に反応した彼が立ち上がる。
 その勢いに思わずソウゴも翔太郎も後ずさりながらそちらに視線をやると、それまで男だとばかり思っていた者の顔を確認してさらに驚く。
「女の子だったのか」
 声を聴く限りでは声変わりの途中の少年の様だと思っていたが、今の声は普通に外見通りの少女のそれだった。
 一方、翔太郎が驚いた理由は――
「凄い髪の色だな…」
 ショートヘアーに整えられた髪の毛は、綺麗な六色のグラデーションに染め上げられていた。翔太郎に言われて帽子を落としたのに気付いたのだろう、少女はキャップを拾ってかぶり直すと、改めて翔太郎に向き直る。
「左翔太郎、あなたに依頼がある…これと私を、あいつらから守ってほしい!」
 そしてその手に握られていたのは、小さめの奇妙な箱だった。